ふと、アルバムから取り出した一枚の写真。それは40年以上も前にヨーロッパを放浪していた頃のワンシーンだった。
場所はパリのモンマルトルの一角で、サングラスをして路上に日の丸を広げて日本の土産ものを売っている場面のようだ。
片道切符で日本を飛び出してから一ヵ月が過ぎた頃。
まさかこんな所で紛い物の真珠ネックレスと浮世絵ハガキを並べて売ることになろうとは考えもしなかった。
北欧での仕事探しはまったく空振りに終わり、生活するための職探しにヨーロッパを転々とするはめになっていた。
「世界の路地裏を生き抜くんだ」そんな大見得を切って出て来たものの、いざ窮すると弱音が出てくるものだ。
※<本文より抜粋>
【目次】
______________________________________